さよの巣

おたくの駄文

「COCOON 月の翳り」感想


TRUMPシリーズ10周年記念作品 COCOON 月の翳り

繭月 感想。

※むっちゃ長くて深刻な繭期です。

ネタバレ!!

 

 

 

 

DVD視聴しました。

前半と後半の人間関係の変化だけみれば、シリーズ1番のしんどさ。

やっぱり1回観ただけでは、ストーリー追うの精一杯で、キャラの感情やらなんやら分かってなかったと思いました。ラファエロ、アンジェリコ、ディエゴ、ドナテルロ、それぞれの感情の揺れ動きが克明に描かれていて繭期(思春期)の少年たちのほとばしる激情がすごい。アクションもほとんど拳と拳のぶつかり合い。この熱量なのに全体の流れに矛盾がなくて、すごい脚本だなって思う。読み込めば読み込むほど、じわじわとしんどさが増していく。前半と後半の人間関係の変化だけみれば、シリーズ1番のしんどさ。(誰も死ななかったから逆に人間関係がしんどいというのもある)

 

ラファエロとアンジェリコの容姿が、グランギニョル踏襲100点満点なんですよ。ラファエロの髪色は母だし、髪型は父で。アンジェリコの髪型や手袋にお父様リスペクトを感じる。でも金髪ではない…それはそう。父母黒髪だから。母が黒髪パーマだったから母譲りだよ。でも立ち振る舞いとか横顔とか、なぜかゲルハルトに似てるんだよね。血は繋がってないのに。

 

 

ラファエロ

ラファエロはぽわぽわしてますよね。まだTRUMP時の人格形成がなされてない感じ。色んなものに心を動かされるし、ディエゴ先輩にも影響される。ラファエロがウル(エミール)を見たときにふわっとした笑顔になるのがかわいい。でも「弟のために生きてるわけじゃない」って言っちゃう。ダリのいいつけが何度もラファエロの脳内で流れるんですが、神妙な顔で聞いてる時もあれば苦悩してるときもあって感情が忙しい。最初から繭期強め。そんな状態なのにアンジェリコに「君のことなら何だって分かる」とか言われて、俺の何が分かるの? ってそりゃーなるわ。抱きしめてあげたくなりました。ダリちゃんラファエロを抱きしめてあげて…。逆にアンジェリコはブレないんですよね。ディエゴ先輩の言葉にも惑わされない。ラファエロにしか動揺しない(それもそれで危険)。

 

あのとき、ラファエロコクーンを飲まされてなければ2人の関係がここまでこじれることはなかったのかなって考えてしまう。だってさ、親友と家族どっちが大事かって、どっちも大事でいいじゃん…。

 

普段舞台観ないんでこの作品で荒木さんを初めて知ったんですけど、プロフィール見てびっくりしました。年齢?! 舞台の上では10代にしか見えませんでした。普段のお写真も拝見しましたがそれでも大学生くらいにしか見えん。お若い!!

 

 

エミール

すごく優しくてすごく良い子でした。

でも初見時に、宮崎さんの真顔が大変お綺麗で…しかも若干虚無で、こいつなんかあるのでは? って思っちゃったよね。話し方がアレン(NU版R)ぽいし、服も一人だけアシンメトリーだし。でもただのミスリードだった。カテコのお辞儀が道化師のポーズのようで謎めいていて、色々「あえて」だったんかなと思った(妄想)。

「希望しかない」と言うエミールが、希望という名前を持つウルに見えちゃうのどういう因果なのか。「ウルでいいよ」優しい。ラファエロの笑顔を引き出してくれてありがとうエミール。

エミールのときと、記憶の中のウルとして出てくるとき服が違う。

口癖の「お友達」は星アンジェリコにうつってしまったのだろうか…。

陰影さんたちと戯れてんのかわいい。

ジュリオとエミールは一生お友達でいてくれ。

 

 

ジュリオ

彼は出てきた瞬間に目を引いた! 何ですかあの長い袖ひらひら!黒髪ロングヘアー!かわいい!喋りだしたら一人称「僕ちゃん」ですよ!かわいい!ツンデレ?かわいい!涅槃像やってくれた!かわいい!ディエゴといちゃいちゃしてんのも可愛かった。いろいろキャラ設定盛り過ぎでは。

でも普通に良い子だったね。「僕ちゃんはそっちには行けない」っていうとこ、寂しさと同時に地に足ついた子なんだなって思った。

状況説明はいつもジュリオの役目。

シリーズ初、越繭(えっけん)していく様子が描かれていた(袖がない(泣)。生きててくれて良かった。良い大人になって欲しい。

田中亨君のスペクタから繭への転身がすごいんですよ。

 

 

ジョルモロ

「特級貴族だからってえらそうにしてるんじゃねーよオラオラ」みたいな感じで出てきたから、えっ!?ってなりました。(オズと執事が転生してきた~!わ~!)イニシアチブ使ってないのに、アンジェリコの威厳に屈するしかないジョルモロ。短編小説良かった。

 

ティーチャーの中に片腕がないおじいちゃん先生いて気になる。意味深。

アンゼルムめいちょうって誰?

 

 

アンジェリコ

ラストの花びらの量がやっばかったですね。あれは心が流した血の量でしょうか。しんど。アンジェリコは、一番一人ぼっちだった。誰がアンジェリコのことを愛してくれるんだろう。ガーベラよりも可哀そうじゃん。

虐待とかされてないんだなと一瞬ほっとしたけども、父上に声をかけてもらった記憶もないですって!? 無関心と虐待はどっちがましなのか? 

「僕は父さんに愛されたかった。答えは単純で僕も君も愛されたかっただけなんだ」ってラファエロに言ったセリフ。切ない。ここだけ「父さん」呼びなのもつらい。

自分で自分の孤独をよく分かっている子だと思った。悪い子じゃない。むしろ良い子なんだよ。14歳までわりとまっとうに育ったのは使用人とか家庭教師とか、まともな大人が側にいてくれたのかな。でも使用人は使用人だしな。家督を継ぐ=父上に認められる、と思って頑張ってるんですよね。

ウルの幻覚は「都合の良い幻覚だ」と分かってる。ラファエロよりも自分のことを客観的に見てる気がする。ただラファエロに対してだけ重すぎる。血は繋がっていないのになんでこんなに父上に似ちゃったかな。

小さいときにデリコ家に通ってたのが唯一の楽しい子どもの頃の思い出なのかもしれない。(←デリコズナーサリーのことなん?

 

アンジェリコ家督を継ぐという自分の宿命は微塵も疑っていない。フラ家の誇りがアイデンティティ(というギニョル視聴済勢にしか分からない皮肉)。

ラファエロは家を継ぐのも嫌だし、弟を守るために強くなれと言われるのも嫌。

このすれ違いのせいで、アンジェリコラファエロの地雷をバンバン踏んじゃう。そしてラファエロはディエゴに憧れちゃう。弟がいなかったらどうだったんやろ。家督を継がない弟が目の前にいたからこそ、宿命に抗いたくなっちゃったのか。ダリちゃんの血筋だからどっちにしても「なにがデリコだ!」っていうようになったかもしんないけど。あと、ラファエロはお母様に愛された記憶が少しはあるし、お父様の愛をまったく受けてないわけでもない。このあたりの違いもあるんだろうか。

アンジェリコかウル(ウルじゃないけど)どっちか選べと、ディエゴに言われたときに、ラファエロは弟を守りたいからウルを選ぶわけですよね。お父様のいいつけだからとかデリコ家の家名を守るためとかじゃなく、ただ弟が大事だから。

 

でもさ、アンジェリコラファエロもちゃんと親友だったよね? クランにやってきて最初の1~2か月、2人はずっと一緒にいて楽しかっただろうし。ファラエロの部屋にふらっとやってきたアンジェリコとの仲の良さとか、医務室でラファエロを心配してるアンジェリコとか、あれは嘘なんかじゃなかった。”君僕”は重かったけど。「気持ち悪いな」って返せるくらいの距離感だったじゃないですか。(このへんだけ延々見てたい。時よ止まれ)

アンジェリコがヤバイって聞いてちゃんと駆けつけてるし、最後の最後にアンジェリコがディエゴに刺されそうになったときはかばおうとしてるし。

ディエゴが二択にしたせいなんですよ…

 

けど、「煩わしいウルから解放されて良かったな」で、最後の地雷はアンジェリコが自分で踏み抜きにきてるから、やっぱりアンジェリコおまえー!ってなる。

 

「高貴なる五家」とかいうワードでてきて「F4かよ」とツッこんだ。

 

 

ディエゴ

上流階級のお坊ちゃんで、成績優秀で、顔も良くて、皆の人気者で、ケンカも強くて、弱きを助け強きを挫くっって、どこのマンガの主人公かよって感じ。最初の喧嘩の加勢にくるとこもちろんカッコいいんですが、ラファエロを屋上に引っ張っていくシーンが少女漫画だった(男2女1の恋愛ものにありそう)。

 

初見の感想に「一番の被害者。まさかのダンピール。ドナテルロから標的にされる。でもそのシーンすごいセクシーで好き」とか私書いているんですけど、再度見ると、ドナテルロにロックオンされるより先に、ラファエロにロックオンしてますよね? ラファエロとアンジェリコの仲を引き裂こうとしたのは、嫉妬なんだろうか…? 「これが本当の俺なんだよ!ラファエロ~」って言ってましたし。ディエゴにとってラファエロはどういう存在だったんだろ。アンジェリコラファエロだよね。

 

医務室にやってきたのも自分からだったし、薬ももっとくれって言ってるし、自分から堕ちていってしまうディエゴ。ディエゴはずっと嘘の檻の中にいた(これ無自覚だけどアンジェリコもそうなんだよね。そして星のウルも)。

医務室のディエゴ、繭期を抑えられなくてふわふわ動いてるの(鵺ですか?)に、「俺たちが飲んでるのは繭期を抑制する薬なんかじゃないだろ」っていきなりトーン変わるところが良い。コクーンを飲み始めてもディエゴはまだ理性が残っていそうなところが逆につらい。ドナテルロに「グスタフ。僕は君になりたかったんだ」って言われて「あんたイカレてるな。俺はグスタフじゃない」って応えるんですよ。まともか。しかも軽く抱きしめ返してあげる。なんなんだこの二人。てか繭期大好きおじさん、少年に"君僕"するんじゃない! やっぱりディエゴは被害者ですかね? コクーンがなければまともでいられた…? その前からもう破滅フラグ立ってた? どうだろうか。

 

ジョルモロには短剣は鞘に戻して拳で殴りかかり、アンジェリコにだけ剣を向ける。剣持っててもエミールとジュリオには使わないようにしてるし(結局うっかり刺しちゃったけど)、やっぱり理性残ってるよな。このへんの碓井さんの絶妙な演技、初見では気づけない。

 

ディエゴが過去の自分を暴露したのってアンジェリコだけ(ジョルモロもいるけど)なんですよ。ラファエロじゃなく。

アンジェリコにはダンピールであることを告白し、ラファエロには無理やりコクーンを飲ませる。これを逆にしなかったところ、的確すぎますね。ラファエロに暴露しても逆に同情されそうだし、アンジェリココクーンじゃないんよね。

 

ディエゴが養護院を抜け出したのは何歳の時だったんだろう。6歳差だから、もしソフィが5歳だったらディエゴ11歳とかだし、繭期になるまでそんなに間がない。グラント家にいたのは3,4年とかなのかなぁ? 「父さんは俺を愛してくれた」と言ってるし、きっとダンピールの子供だったら経験できない夢のような生活だっただろうな。現在クランで成績優秀で人気者なことを考えると、この間に貴族としての礼儀を身に着けて、勉強もして努力して、それさえもしあわせだったかもしれない。「父さん」の声を聞いてるディエゴ笑顔だったし。このままグラント家の後継ぎとして生きていけると考えてた時期がきっとあった。でも、全部嘘だから。クランに送られてしばらくしてからかな。そんなことは無理だって思うようになっていったんだろう。

自業自得だけど、最初は生きるための手段だったじゃん。可哀そう…。

だから、まぎれもなく特級貴族のラファエロとアンジェリコに嫉妬したし、悩みや苦しみを抱えながらも逃げずに生きているのを見て羨ましいと思ったんだろうな。

 

ジュリオとエミールと一緒にいるのはどうだったんだろう…。

ジュリオとエミールに暴露できてたら全然変わっていただろうな。言えなかったからこうなってんですけど…。驚きはしただろうけど、3人の友情は変わらなかった気がするんだよな~というのは願望です。

 

ラストの「グラント家にディエゴという息子はいない」もしんどかった。イニシアチブで忘れさせたか。グラント家の財産持って逃げだすとかそういう道もあったのに、ディエゴは悪人にはなり切れなかったんだな。問題を起こした息子をもう息子として思い出してもらいたくなかったのかもしれない。悲しい。

↑ここまでほとんど妄想です。

 

ドナテルロとディエゴのシーン。むちゃくちゃエロスじゃないですか? でもこの2人の結びつきって利益の一致でしかない。ドナテルロは繭期グスタフしか見てないし、ディエゴは薬が欲しいだけ。むなしい。でもこの2人の美×美でした。好きでした。

 

 

ドナテルロ

ビジュアルがまずズルいじゃないですか。CLAMP作品にいそうなアシンメトリーな髪型で、顔が良くて色白で髪も色素薄めで背も高くて。このクラン、クラウスもいるはずなのに、やばいティーチャー居過ぎ。普段まともな大人ですよオーラ出してるだけに、

「僕の知っているグスタフじゃない!」の取り乱し方がとくにヤバかった。

ドナテルロはコクーンをばらまいてジェネリックグスタフを生み出そうとしていたけど、本物の繭期グスタフはコクーンを飲んでないし、同程度の美しい繭期にはそうそう出会えないよ。24年前か。どんなだよ、グスタフの少年時代。

 

繭期大好きおじさんはさ、長く生きすぎて心が壊れちゃった人でもなく、ダミアンコピーでもなく、原初信仰にかぶれた人でもなく、純粋に自分の欲望のために若者たちを利用してる黒幕だったの、ほんとに同情の余地がない。でもビジュアルが美しすぎて、もっと狂っているところを見せて下さい。という気持ちになってしまう。もはや観客が繭期中毒者になってしまうよ。好きです。

 

ティーチャーたちの戦い。三者三葉のお衣装がひらひらするのが最高。ドナテルロの衣装は後ろだけ長いから、階段を降りるときにドレスのトレーンみたいにぞろびく(ほんの少しだけど)あれ良すぎません? あーやっぱりドナテルロのビジュアルずるいな。

 

ドナテルロのラストシ-ン、グスタフに目をつぶされるんですけど、これね、ドナテルロ的にご褒美なんじゃない? お互いに治ることのない傷をつけ合って、しかもおそろですよ…。そんなラストでいいんですか。

 

誰も死なないTRUMPシリーズ、初めて見たな。

 

シリーズだいたい見てる人にとっては、ライネスこんなところで流れるんだ? という感じなのですが末満さんの「あれはアンジェリコの心の中で鳴ってる」というのを聞いてなるほどと納得。前半と後半の人間関係の変化だけみれば、シリーズ1番のしんどさでした。

 

 

演出的なこと。

陰影さんたちが出てきたときに心がざわつきました。ヤバイ!気持ち悪くて好き! 紙とペンを用意してくれたり、繭期の子たちの動きに呼応したり、ただよっているような動きが面白い。

海底のように舞台が青い光で満たされてるシーンも好きです。美しくて息苦しい。

 

繭の月。キャスパレ初見時あそこ誰だかわかんなかったです。珍しく男性ボーカルで印象に残った。シルエットのみで魅せる演出も素敵だ。

 

赤い花びらが鮮血のように舞うのも美しかったです。そして最後の、あの量は、息が止まった。

2人だけの赤い衣装も良い。ここ数か月で刀ステも観たんですけど、この演出見たぞ!ってニヤッとしました(上演は刀ステが先)

 

***

 

読み返したら長文過ぎて自分でひくわ。書いては消してDVD見直して、という作業を延々やってた気がする。深刻な繭期です。

fusetter(2019/12/12)から転記