さよの巣

おたくの駄文

シンエヴァとピンドラ

シンエヴァとピンドラを見ると両方の解像度が上がるよ。という話をしたいと思います。

シンエヴァを見に行ったときにだいたいピンドラじゃん?と思ったんですよ。ぽつぽつとツイッターでは呟いていたのですが、久しぶりに思い返すと、どこにもまとめっぽいものを残していなかったので。劇場版ピンドラも見終わってしばらく経ちますし、今更ですが、残して置こうと思った次第です。とても個人的な感想です

 

庵野監督と幾原監督が仲が良いというのは有名ですよね。ピンドラはエヴァのアンサーで、シンエヴァはピンドラの影響が少なからずあるのではないかと私は思っています。また、10周年記念の『RE:cycle of the PENGUINDRUM』は一部がまたシンエヴァのアンサーなのです。たぶん。

 

エヴァとピンドラ両方のネタバレがあります。

 

 

 

エヴァとピンドラの放映・上映年まとめ。

 

1995年 - 1996年 TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン

1997年『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生

1997年『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

2007年『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

2009年『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

2011年 TVアニメ『輪るピングドラム

2012年『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

2021年『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

2022年『RE:cycle of the PENGUINDRUM 前編 君の列車は生存戦略

           『RE:cycle of the PENGUINDRUM 後編 僕は君を愛してる』

 

幾原監督のアニメ監督のお仕事は他もありますが、今回はピンドラだけ。

 

 

1 疑似家族

 

ピンドラのテーマは家族ですが、実は3人に血の繋がりはありませんでした。疑似家族です。愛の足りない子ども同士が繋がりを求めて家族の形を作っていたわけです。

 

エヴァで、シンジとミサトとアスカの3人が狭いマンションで一緒に暮らします。シンジとミサトは、保護者のようなきょうだいのような曖昧な関係で、そこにアスカも越してきます。彼らもやはり愛の足りない子どもたちで、それぞれに父や母に思うところがあり、高倉きょうだいたちと似ています。シンジたちも少なくとも数話は疑似家族のように楽しく暮らしますが、やがて家族の形は崩壊していきます。

 

過去に大人たちが起こした事件の影響を子どもたちも受けているという点も似ています。

 

 

2 こどもブロイラーと人類補完計画

 

ピンドラの「こどもブロイラー」とは何か。これはL.C.L.に溶けてしまうことと似ています。

「誰が誰だか分からなくなるだけです。透明な存在になるだけです」

つまり人類補完計画なのです。多くの人と心を一つにして、個を捨てる。自我を捨て、大きなものの一つになる。

 

エヴァ20話。シンジがエントリープラグ内で溶けてしまいますが、ミサトに名前を呼ばれ自分の身体を取り戻します。

ピンドラ19話の回想シーンでは、こどもブロイラーへ行った陽毬に晶馬が手を差し出します。18話の多蕗の回想シーンでは桃華が多蕗を迎えに来ます。

 

透明にならないためには、誰かに名前を呼んでもらい手を繋いでもらわなければいけない。誰かの愛が必要なのです。

 

 

3 電車を乗り換える

 

よく知られているようにピンドラは「地下鉄サリン事件」がモチーフになっているので電車が何度も出てきます。とくに11話の晶馬が両親の罪を告白するシーン。赤い95という数字が車内を覆い尽くす映像は印象的です。

 

TVアニメ版エヴァでは自問自答するシンジの精神世界として電車が登場していました。 

 

ピンドラ最終話の「運命の乗り換え」はホームの向かいに来た電車に陽毬を乗せることで成功します。エピローグの陽毬は、おそらく16年前に地下鉄の事件が起こらなかった世界にいます。

 

シンエヴァの終盤に、シンジとゲンドウが電車に乗っているシーンや、マリと大人になったシンジが電車のプラットホームにいるシーン(向かいのホームにはアスカやレイっぽい人がいる)がありました。これもピンドラと合わせて考えると分かりやすい。シンジは運命を乗り換えたのです。エヴァのいない世界へ。

 

 

このように、エヴァとピンドラを両方見るとそういうことか~と思うところがいくつかあり、2つの作品はお互い補完しあっています(と、私は思います)

エヴァのSF的な謎は解明しませんし、ピンドラも様々な要素が絡んでいるので全部分かるわけではありません。でも、キャラクターの心理描写や比喩(メタファー)は理解しやすくなります。両方見たら解像度が上がるよというのは、このようなことです。

 

 

4 実写パート

 

運命を乗り換えたシンジとマリは実写風景の中を走っていきます。

 

劇場版ピンドラにも実写映像がたくさん使われています。(エヴァほど実写そのものではなく、CGっぽくみえるエフェクトがかけられています。ちなみにさらざんまいにすでに似たような試みがありました)

 

このへんはオマージュかどうか分かりませんが、近しいものを感じます。

 

渚にて

 

劇場版ピンドラの最後にTVアニメ版にはなかった海辺のシーンが追加されていました。砂浜に幼い姿のキャラクターたちが大集合しそれぞれ「愛してる」と言う。ここでTVアニメ版エヴァのラストを連想した人も多いようです。そして、海の向こうにうっすらと巨大なペンギンの顔が浮かんでいて、エヴァで巨大な白い月が浮かんでいたのを彷彿とさせます。

幾原監督がシンエヴァをオマージュしたのかなーと思っちゃいます。

 

シンエヴァでマリがシンジを迎えに来た場所も浜辺でした。

 

 

6 ペンギン

 

エヴァとピンドラは実は両方ペンギンが登場しています。生物学的にはペンギンかどうかあやしい、人間と一緒に暮らすペンギン。ときにはキャラクターたちの心理状態を体現しているときも。

動物アニメでもないのにペンギンがいるアニメ、そんなにないです。偶然ではなさそうな?w

 

 

庵野監督と幾原監督がお互いの作品から影響を受けていたら面白いですよね。以上でした。お読み頂きありがとうございました。